前職の居酒屋時代。
こんなオレにもお得意さんというか常連さんが何組かいました。
その中の一組の老夫婦のことが忘れられなくて。
今日はその方たちの話。
その方たちは、月に何回か来て、
奥さんがお酒飲んで、旦那さんは運転あるからって飲まないの。
旦那さんは少し足が悪かったかな。
少しびっこ引いた感じで歩いてて、
だけど店を出た後、
いつもすごく仲よさそうに歩いていた。
もちろん飲んでるときもすごく楽しそうで、
話していてこっちも楽しかった。
若い子達もかわいがってもらっていたし、
オレもたくさん勉強させていただいた。
オレの異動が決まった頃、
どういう訳かしばらく会えないでいた。
だから異動のことも言えないでいた。
いよいよその店での最終出勤日と言う日、
どうしても会いたいな〜と思っていたのに、
やっぱり来ない。
閉店まで1時間弱と言う頃・・・。
なんと来てくれた。
来てくれたなんてものじゃなく、
ほんとに偶然。
もうホントにうれしかった。
だけど異動の話をするときは辛かった。
たくさん感謝の気持ちも込めた。
向こうもホントに残念がってくれて、
奥さんが俺の手を握ってくれて、
たくさん感謝された。
感謝したいのはこっちなのに。
握られた手には、
しわくちゃの千円札が数枚入っていた。
そんなの貰うものじゃないし、
固辞したんだけど、
どうしても餞別だからって譲ってくれなかった。
ちょっと涙がでた。
お金とかモノとかじゃなく、
ただただ気持ちがうれしかった。
自分のことをこんなに考えてくれている方がいるなんて事、
ココロとココロが通じる事、
サービス業をやっていてホントによかったと思えた事、
いろんなことがうれしかった。
その日は姿がホントに見えなくなるまでずっと見送って、
何度も頭を下げた。
あれから何年か経って、
今でもオレは業態は違うけどやっぱりサービス業。
人と人が直に触れ合う以上、
俺の中ではサービス業と言う認識。
今でもくじけそうな時とか、
辛いとき、
あの時の千円札を眺める時がある。
不思議と力がわいてくる、
一生大事にしたい宝物。
オチはないけど、
今日はいつもと違う感じの話。